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「創る能力、捨てる能力」そのバランスが大切

極上 歌丸ばなし
「芸のためなら女房も泣かす」「それもこれもみんな芸のためや!」の春団治的芸人の対極と言おうか。聞いてる時間が心地よい。釣りをはじめ多趣味であることも語られているが、例えば読書に触れて、「まァ、よく、仲間からそんなに読んでて、落語に役立つの?って聞かれるんですが、何にもありません、完全に楽しみなんです」って言葉がある。若い頃の写真と今を見比べると、今のほうが全然良くって、歳を重ねるごとに油っけが抜けて味わいが深まるタイプと見た。
 この本で、師匠が遊郭育ちである事やあばあちゃんっ子だった事、酒がまったく飲めない事や元々新作畑のひとだった事などを知った。なんか職人っぽいと言うか、けれんみがないと言うか、実に淡々、飄々とした味わい。 人生に笑いを、桂米丸門下桂歌丸は平成17年噺家ではまれな芸術選奨に輝いた(怪談牡丹燈籠他で)。。人生何事にもこの心得が大切。昭和43年、真打ち昇進、やがて掴んだ長寿番組「笑点」レギュラーの座を固めている。他のキャラ立ちの大看板と違って、歌丸本人を見たい、聞きたい、知りたいって言うより、純粋に歌丸の噺を聞きたい、って言うのだろうか。話すように書いた本書、どこもすっと入って面白いのだが、はっといいこと言っているなと感心させられること、それは「創る能力、捨てる能力」が共に大事であるということになる。もちろん、そうした履歴は師匠の噺に反映されてるんだろうけど、直接的な感じがしない。本書で歌丸師匠は“脇役好き”であることを語っているけど、師匠自身も脇役に徹して噺(主役)を引き立てる、決して噺より出しゃばらない、ってタイプなのだと思う。新作をやっていると、古典に生かせることがある、変えていい噺と変えてはいけない噺もあるので、それは長年の経験でこつを覚えねばならない。古希直前でなお気も心も若い(雅) 歌丸師匠の噺は聞いていてほんと気持ちが良い。なんつーか、噺に没頭できる。脇役好きの人柄である歌丸。本書は勧められて落語人生、初の芸談一代記をまとめたものである。
 それにしても、円右師に出番変わってくれって言われて、いや私も用事がつって、2人とも寄席ヌいて、相模湖の湖上で鉢合わせって釣りバカエピソードには笑っちゃいました。ここらあたりが歌丸師匠の味わいのエッセンスなんだと思うな(履歴は関係ないって書いちゃったけど、東京でも田舎でもないハマっ子センスってのはあるかも)

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