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「そして考えろ!」

ゲルニカ ピカソが描いた不安と予感 (光文社新書)
「反戦」の象徴としてのアクチュアリティに疑念を抱かずにいられない人も、作品のメッセージの曖昧さや難解さに戸惑いを覚える人も、描かれたイメージの造形的意義が掴めず困惑する人も、漠然とした不安を感じる人も…。
他の方々が書いているように美術史の中での位置付けや他の名作との比較といった美術解説書的な内容もあるのですが、
前半の『ゲルニカ』が完成するまでを習作と一緒に追いかけていく部分はゲルニカと向き合うピカソの物語のようでした。

「一枚の絵を考えること」は、すなわち「世界をよりよく理解すること」であるという筆者のことばは、本書に展開される豊かな思考に触れるわたしたちにとって、極めて説得力を持つだろう。さらなる思考の深化をもたらしてくれるはずである。

本書は、《ゲルニカ》の内包する多義性や重層性、作品を前にわたしたちが感じる「違和感」の起因するところを、多様なアプローチで暴いてくれる。ピカソの《ゲルニカ》を前にして、「居心地の悪さ」を感じる多くの方々に、本書を一読することをおすすめしたい。異質なものを前に、思考停止するのは簡単だ。。
想像力を妨げない程度の説明と習作の図版のおかげで、『ゲルニカ』を完成させていくピカソの姿と頭の中を
うしろから見ているような感覚を味わえます。

《ゲルニカ》を前に「居心地の悪さ」を感受するとき、私たちはその感受性を持ち得ていることにまずは感謝すべきなのかもしれない。思い切って言ってしまうなら『ゲルニカ』を巡る物語。しかし、「見ろ、逃げずに正視しろ、そして考えろ!」(本書より)。さらに本書の真骨頂は、《ゲルニカ》をめぐってなされた今日的問題についての考察である。

普段は美術関係の本なんか読まないのですが、美術を意識しないでも読めてしまいました。
そんなわけで、美術に興味はあるけど「むずかしいかも」なんて躊躇している人には最適の入門書かも。とくに、制作過程をめぐるドキュメントとその分析、美術史的位置づけをめぐる章は、筆者の研究者としての豊かな経験と才学博通に支えられており、充実した美術史の講義を聴講した後のような読後感がある。これに触発された読者は、同じ著者による『20世紀絵画―モダニズム美術史を問い直す』と『逸脱する絵画』も併読されるとよいだろう。『ゲルニカ』の解説書と思わなくていいかもしれません。筆者の指摘するように、《ゲルニカ》がわたしたちにこう迫りくることによって愛すべき作品であるとすれば、本書は一枚の絵画を前に「考えること」の切実さと可能性を教えてくれる愛すべき本である

北欧 傘

ゲルニカ ピカソが描いた不安と予感 (光文社新書)

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